小型のくせに豊かな低音:サウンドカノンMkIII(ダブルダクト)
てなわけで、Fostexの8cmユニットを使った低音重視型小型スピーカー、サウンドカノンMarkIII(ダブルダクト)を作ってみました。
一見、普通のバスレフのダクトが2つあいた小型スピーカーといった感じですが、サウンドカノン(うすしお味)、サウンドカノンMkII(塩ビ)をもとに、さらに低音を倍増、イコライザーを使わないで普通に聴ける低音豊かな小型スピーカーを目指しました。
概念としては上の図のように、スピーカーユニットの背圧とその後ろの振動膜(コンドーム)で発生する中低音が増強された音(青矢印)を第一ダクトで排出、次に振動膜の背圧と周りを囲ったエンクロージャーで発生したより低音成分の強い音(赤矢印)を第二ダクトで排出し、効率的に低音・音圧を増量しようというものです。
強いて言えばパッシブラジエータ(=振動膜)を利用したダブルバスレフダブルダクト式スピーカー(長い(笑))といった感じでしょうか。
結果からいうと、それはもう、予想以上に低音が出ました。もちろん、中低域が豊かになったのでイコライザーで音をいじる必要もなく、普通にアンプに繋げますし、アンプやイコライザ、ポータブルプレイヤーなどで軽く低音と高音を持ち上げてやれば、このサイズとは思えないほどの迫力を持った音が出ます。
出てくる低音は小型スピーカーにありがちな無理して出したようなぼやけた感じが無く、伸びとスピード感・パンチがあるソリッドなものです。今回は防磁型8cmスピーカーのFOSTEX FE-87Eを使用。説明書によれば、このユニットのバスレフ版の標準ボックスは5リットルとの事。今回作ったのは1.2リットル程度ですから、ほぼ4分の1のサイズということでしょうか。
今回はこちらのページ<自作スピーカーの測定>を参考に、過去のサウンドカノンや市販スピーカーと比べる意味で簡易的に周波数特性を測ってみました。測定自体は簡易で素人がはじめて挑戦したものですが、それでも傾向などははっきりとわかり、これを見ると今回のMkIII(ダブルダクト)がかなり低音が出ていることがわかるかと思います。
↑まず、一応リファレンス的な意味合いで、JBLの4312Mの周波数特性。ほかのスピーカーより大きいのでアンプや測定距離は別ですが、音の傾向は出ているかと思います。さすがにウーファーが13cmあると低音が結構出ていますね。中高域も割合フラットです。
↑今回作ったサウンドカノンMkIII(ダブルダクト)。さすがに低音は4312Mには及びませんが、8cmにしてはかなりがんばっているのではないでしょうか。110Hzくらいのところが盛り上がっており、これが低音の力強さに貢献していると思います。一般的なミニコンポやラジカセ、ポータブルプレイヤーに付いているような低音ブースト回路を使用すると驚くほどの低音が出ます。振動膜が低音が増強されるほど、効果的に機能している気がします。
↑次に市販品で相当古いアクティブスピーカーですが、小型のくせに低音が出ることで定評のあるSONYのSRS-Z500。実際に店頭で低音がよく出ていたので買ったものですが、今回は一応これくらいの低音は出したいということでこれを目標にMkIIIを制作しています。今回は比較のためにZ500のアンプは使わず、MkIIIと同じアンプに繋げて音を出してます。
結果ですが、グラフでもわかるように、(聴感上も)MkIIIのほうが中域~低域にかけて音が出ています。さらにZ500は無理して低音を出しているようなところがあり、音量を上げるほど余裕もなく、箱も鳴り、音がこもる感じがありますが、MkIIIはそういった事はありません。スピーカーユニットのサイズ・グレード、エンクロージャーの大きさ(Z500のほうがMkIIIより一回り小さい)の差はあるかと思いますが、Z500に負けてしまってはわざわざFE-87E(x2)に送料・手数料込みで6000円以上を払った意味がなく、ある意味ほっとしています(笑)
↑次にサウンドカノン(うすしお味)。さすがにこれはイコライザーで調整しなくては聴けないというグラフですね。そのままでは中低域が全滅。それでも、このサイズ、この作りにしては(イコライザー前提なら)結構低音が自然に出たので、このあたりで既に振動膜の背圧も漏らさず利用するMkIIIの構想は出来上がっておりました。
↑最後にサウンドカノンMkII(塩ビ)。さすがに紙製と違ってビリつきが出にくく、音に安定感がありますが、特性自体はほとんど同じ。しかし、これのおかげでMkIIIが容易に作れる目処がたちました。
実際の制作は以下の通り。
まわりを囲うエンクロージャーはMDFの4ミリ厚のものを使用。このくらいの厚さだと、普通の事務用カッターで表裏から金尺を当てて切り込みを入れて折ってやれば十分切れるので木屑も出ないし、工作が苦手な私でも比較的寸法通りに切れます。
元板の幅が30cmだったので無駄なく取れるということで、スピーカーの高さは15cm、幅、奥行きは10cmと決めました。(奥行きは前後の板の厚み4mmx2が加わるので正確には外寸10.8cm)
↑とりあえず、サウンドカノンMkII状態でEF-87Eを取り付け。ユニットを取り付ける継ぎ手は三菱の65サイズのものを使用しましたが、寸法ぴったりです。全体に音が100円ユニットより聴きやすくなっていますが、さすがにイコライザーなしでは聴けません。(左)
ユニットをはずし、4ミリ厚のMDFで位置取り。第2ダクトは直線の継ぎ手を使用。(右)
↑8cmクラスのユニットなら電動ドリルのホールソーで簡単に穴が開けられます。
↑エンクロージャーは、万一振動膜(コンドーム)が破れた際の補修に備えるべく、正面だけネジ止めです。実際に数日連続で鳴らしてますが、コンドームは丈夫なようで、大音量で震わせてもまったく問題ありませんが、さすがに経年変化については未知数です。ネジ止めと補強を兼ねて、角材を4箇所に貼り付けてます。(左)
右が正面にユニットをネジ止めし、裏面にダクト、継ぎ手をホットボンドで固定して組み立てた状態。(ユニットと継ぎ手で正面板をはさむ形になっています)
単純な構造なので組み立てはとても簡単です。
↑水性ペンキで黒く塗って完成。ヤマハのフルレンジ一発の美しい小型モニター(これも発売当時評価が高く、低音も結構迫力あります)NS-3MXの上に置くと、同モニターのミニチュアのようです。
↑ただでさえ小型の4312Mと並べても、豆スピーカーといった趣き。(左)
愛飲しているキリンの発泡酒、グリーンラベル淡麗350ml缶と比べるとさすがに大きいですがw(右)
このMkIII、PCでMP3データ連続再生でエージング中ですが、最初固かった感じの音がどんどんよくなる気がします。吸音材は入れていませんが、音のバランス的にはまったく問題なさそうです。
MDFが4ミリと薄く、箱鳴りもしているのでしょうが、第一ダクトから出る音と、適度にクッションとなる振動膜のおかげであまり影響していない感じですね。
ある程度音量をあげて普通に離れて聴くと中低域の押し出しが強くなり、特にドラムやベースのアタックなどに迫力が出ます。たまーにドラムなどでコンドームの固有振動数に近いものは音が変になるような気もしますが、最初からそういう音なのか、あるいは気のせいかもしれません。(^_^;)
★2010.3.10追記
コメント欄にもあるように、裏のコンドームは簡単に破れてしまったので、薄手の使い捨てゴム手袋を切って広げて膜にし、継ぎ手の管に10本くらいの輪ゴムできつく締めて張ってみたところ、気持ち締まりのある低音が出るようになりました。太鼓・パーカッション系が少しリアルに、ベースも歯切れよくなる感じです。
ただ、曲によっては嘘くさくなったり、スカスカになったり、物凄く変な音になったりするものもあり、ちょっと癖が強いみたいです(^_^;
耐久性はあるみたいでしばらくたって開けてみても問題無いようです。
(輪ゴムで留めてあるだけなので、膜が破れてもいつでも簡単に取り替えられます)
★2010.3.12追記
変な音になるのは4ミリと薄いMFDによる共振が一番の原因ではないかと思い、エンクロージャーを重くし、共振しにくくすることに。
具体的には油粘土を後ろに貼り付け、さらにその上から厚盛りができる接着剤で塗り固めて固定します。
接着剤には造作ボンドCK11 42725というのを使いました。
この製品は健康住宅対応製品ということで、臭いも殆ど無く、密閉された部屋でも使うことができます。
ずいぶん前にホームセンターで買ったものですが、一本800円前後みたいですね。
下地の油粘土はユニットの後ろの音が回り込みやすくするように、角を丸めて洞窟(笑)をイメージして盛ってみました。
結果、かなり重量も増え、音量を上げても共振が起こりにくくなったようです。
実際に音を聞いてみると低音も安定して出るようになり、音が変な感じになった曲も普通に聴けるようになりました。
ノーマルで聴いてもまあまあ低音が感じられますが、WindowsMediaPlayerのSRSのTruBass、WOWエフェクトを軽くかけると良い感じになります。
でもやっぱり低音の質や出方は物足りない感じ。コンドームのほうが良かった気がする…
あとはユニットを上向きにして1週間ほど寝かせておけば乾くんじゃないかな~。
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